羊水検査のリスクとは?リスクを避けるためにできる3つのこと

羊水検査は、ほぼ100%の精度で赤ちゃんの先天異常を診断することができる出生前診断(出生前検査、出生前遺伝学的検査)です。

羊水検査を受診する理由は 「35歳以上の高齢出産だとダウン症の可能性が高いと聞き、自分の子どもが心配だから。」「不妊治療の末やっと授かった子どもなので、事前に子どもの状態を知り準備万全で迎えたい。」「妊婦健診の際に染色体異常を指摘されて不安だから。」など様々です。

しかし、高い精度とは裏腹にリスクが存在するのが羊水検査のデメリットです。せっかく検査を受けたいと思っても、「リスクがある」だけの説明だと危険な検査なのではないか、と受診をためらってしまう方もいると思います。

このコラムでは羊水検査を検討中の妊婦さんがリスクを理解し、納得した上で検査を受けるために羊水検査の基本情報(検査を受けられる時期、費用、検査方法、検査対象となる疾患)やリスク、また、リスクを避けるためにできる3つのことをご説明します。

羊水検査の基本情報

羊水検査のリスクの説明に入る前に、まずは羊水検査について理解を深めましょう。

羊水検査とは

羊水検査は出生前診断の中でも確定診断と呼ばれる精度の高い検査です。リスクがあるため侵襲的検査とも呼ばれています。

確定診断には、もう一つ絨毛検査があります。この二つの大きな違いは検査時期と実施施設の数です。絨毛検査は妊娠初期の11週〜14週で検査を受けることができますが、羊水検査は妊娠15週〜16週以降からしか検査ができません。ただし、羊水検査は絨毛検査よりも手法が簡単なため、実施施設が多いことがメリットです。妊婦検診とは異なり、希望者のみが受ける検査です。

羊水検査の費用は全額自己負担となり、相場は約15万円です。羊水検査の費用に関しては別のコラムで詳しく説明していますのでそちらも合わせてご覧ください。

羊水検査の費用はいくら?保険適用可否やスクリーニング検査の費用もご紹介!

羊水検査の方法

羊水検査の方法は以下の通りです。

  1. エコー(超音波検査)で胎盤の位置、羊水量が十分であるか、子宮筋腫(子宮内にできる良性の腫瘍)の位置を確認し穿刺ができる状態か確認します。
  2. 確認ができたら、感染予防のために消毒した針をお腹に刺し、羊水を20ml採取します。採取後、その日に帰宅する場合と1日入院をする場合に分かれます。
  3. 羊水中に含まれている胎児の細胞を培養、染色し、顕微鏡で染色体検査をします。約2週間から3週間で結果が出ます。

羊水検査でわかること(検査項目)

羊水検査の検査項目は大きく分けて染色体の数の異常を調べるものと、構造上の異常を調べるものの2つがあります。

染色体の数の異常

染色体は1〜22番染色体(常染色体)と性染色体の2種類があり、それぞれ2本ずつ1対で計46本の染色体があります。しかし、何らかの原因で染色体の数が3本になってしまうトリソミーや、1本少ないモノソミーと言った染色体異常が発生することがあります。

羊水検査では常染色体と性染色体両方の染色体の数的異常を検査することができ、例えば、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)、ターナー症候群(モノソミーX)、クラインフェルター症候群などの疾患の有無を確認できます。

染色体の構造上の異常

羊水検査で検査できるのは数的異常だけではありません。染色体の一部が切断され、他の染色体に付着してしまう転座と呼ばれる構造異常や、染色体の一部が無い欠失なども診断することができます。

検査結果は陰性、陽性のように結果がはっきりと出ます。出生前診断の中には結果が確率で表示(Ex.〇〇パーセントの確率で21トリソミーの可能性を認めます)される検査もあるため、結果をどのように解釈するかは夫婦次第ですが、羊水検査は解釈の違いで結果の受け止め方が変わる心配はありません。

羊水検査のリスク

羊水検査はお腹に直接針を刺し、羊水を採取します。その穿刺針が胎児に当たってしまったり、針の消毒が不十分だったり、空いた穴が塞がらなかったりした場合、母体や胎児に影響が出ることがあります。これが羊水検査におけるリスクです。羊水検査を受けるに当たって理解しておきたいリスクを胎児目線、妊婦目線に分けてご説明します。

胎児の危険/流産の可能性が0.3%

妊娠22週より前に妊娠が終わることをすべて「流産」と言います。羊水検査の穿刺針の影響で0.3%の割合で胎児が流産してしまう可能性があります。胎児が双子の場合の流産率は3.57%と単胎児と比べると流産の可能性は高まります。 ただし、羊水検査をしなくても後期流産(12週〜22週に起きる流産)は1.7%の割合で起きているので、極端に高い割合ではないと指摘する専門家もいます。

母体の危険/破水 出血 子宮内感染症 羊水塞栓症

通常羊水は羊膜という膜に包まれており外部に漏れ出すことはありません。しかし、羊水を採取するために穿刺針を刺した影響で羊膜が破れてしまい、羊水が溢れてしまうことがあります、これを破水と言います。

破水が起きた際に気をつけなければいけないのは羊水塞栓症です。 浜松医科大学学長である寺尾俊彦さんの発表によると、羊水塞栓症とは、羊水が母体血中に流入することが原因で起こる呼吸循環障害です。妊婦全体の死亡要因の中で一番頻度が高いものになります。羊水塞栓症の原因は、羊水穿刺以外にも破水後の過強陣痛、子宮の手術瘢痕部の解裂、潜在性子宮破裂、陣痛促進剤の投与なども該当します。

羊水検査では破水が1%ほどの割合で発生しますが、多くの場合は1週間程度でよくなります。その他にも、かなり稀な症例ではありますが、出血、子宮感染症、母体障害などの可能性もあります。

出典元:
平成14年12月9日放送  第12回日本産婦人科医会全国支部医事紛争対策担当者連絡会より「羊水塞栓症」  浜松医科大学学長 寺尾 俊彦
(最終閲覧2019年6月17日)

リスクを避けるためにできる3つのこと

羊水検査には母体、胎児ともにリスクがありますが、同時にリスクを和らげたり、リスクを避ける方法もあります。この章では主に3つの方法をご説明します。羊水検査を受ける際には、以下のことについて気を配りましょう。

抗生剤を飲みましょう

羊水検査後には感染症予防と、子宮収縮抑制のために抗生剤が3日分処方されます。抗生剤を飲まないと感染症や破水などの可能性を自ら高めてしまうことになりますので、しっかり内服しましょう。

水っぽいおりものがでた場合は速やかに病院へ

この場合、おりものではなく破水の可能性があります。破水は前述の羊水塞栓症や、合併症の原因になります。破水は穿刺当日に起こりやすいと言われていますが、稀に翌日以降に起こることもあります。大事に至らない為にも思い当たる節があればすぐに病院に連絡しましょう。

スクリーニング検査を受けて羊水検査を回避しましょう

出生前診断には「非確定検査」と呼ばれる精度は劣るもののリスクがない検査があります。リスクを回避するためにもまずは非確定検査を受けて、染色体異常の可能性を指摘される場合のみ羊水検査に進むという流れが一般的な出生前診断の流れです。非確定検査に分類される検査は主に以下の4つの検査です。

  • NIPT(新型出生前診断)
    母体の血液中に含まれている胎児由来のDNAを調べる検査です。精度が99.99%と非常に高く妊娠10週目から診断ができることが特徴です。
  • 母体血清マーカーテスト(クアトロテスト)
    母血液中のタンパク質を調べる検査です。精度はNIPTに比べて劣りますが、比較的安価で受けられることが特徴です。
  • 胎児ドッグ(超音波検査)
    胎児の首の後ろのむくみ(NT)の厚さを測定し、形態的な観点から検査を行います。遺伝的な検査ではないため、染色体異常を確認する検査としては精度が劣りますが、妊娠中期では心臓や大脳など染色体異常以外の検査をすることができ、かつ精度も高いことが特徴です。
  • コンバインド検査
    胎児ドッグ(超音波検査)、母体血清マーカー検査と超音波検査を組み合わせて行います。精度はNIPTと比べて劣りますが、妊娠11週目から診断を受けられることが特徴です。

それぞれ精度や検査項目、検査の実施可能時期などが異なるため自分にあったものを選びましょう。

まとめ

羊水検査には母子ともにリスクがありますが、診断の精度はほぼ100%とメリットが大きいことも事実です。逆に非確定検査は確定診断に比べ、精度は低いもののリスクが小さい検査であり、出生前診断にはそれぞれの検査に特徴があります。

その中で、自分たちはどの検査を選択するのか、結果が陽性のときはどんな決断をするのか、など出生前診断を受ける前にご夫婦で相談する時間を設けましょう。不安なこと、心配なことがあれば遺伝カウンセリングを専門としているクリニックまたは医師に相談してみることも一つの手です。

ご夫婦お二人で納得した方法を選択し、安心して出産をお迎えください。

産婦人科医 奥野幸彦 院長

医師監修:産婦人科医 奥野幸彦 院長

自己紹介

産婦人科医としてこれまで多くの相談を受ける中で、妊婦の方々がご出産までの約10ヶ間様々な不安な気持ちを抱えていることを知りました。そんな不安が少しでも減るように日々の治療・検査を通して妊婦の方々に向き合っていきます。

略歴

  • 1977年 大阪大学 医学部卒業
  • 1977年-1985年 大学病院・市民病院・救急病院などで勤務
  • 1986年 産婦人科・外科・内科を備える奥野病院を開院
  • 2000年 ジェンダークリニックを開院
  • 2017年 八重洲セムクリニックを開院

保有資格等

  • 日本医師会 認定産業医
  • 国際出生前診断学会会員
  • 日本産婦人科学会 認定医
  • 母体保護法指定医