出生前診断の種類や検査内容とは?わかりやすく解説!

妊娠すると新しい命を迎える期待感とともに、子どもの成長を心配されている方は多いのではないでしょうか?

鳥取県福祉保健部子育て王国推進局子育て応援課の調査によると、妊婦さんの84.6%が「妊娠中に不安なことがあった」と話しており、中でも何に不安を感じているかという質問では、「赤ちゃんの成長・異常の有無のこと」と回答された方は44.5%と「自身のからだの心配」に次いで第2位でした。

「もし自分の子どもが何か病気を持っていたらどうしよう。」と心配されている妊婦さんの中で、最近話題になっているのが出生前診断です。出生前診断とは生まれる前に子どもの先天的な病気の有無を確認する検査です。しかし一口に出生前診断と言っても、検査によって特徴があり、妊婦さんの状況によって適切な検査が異なります。

このコラムでは、出生前診断とはそもそも何かという基礎知識から、出生前診断の種類とそれぞれの特徴などの説明を通して、「出生前診断ってどんな検査なんだろう?」「自分はどの出生前診断を受ければいいんだろう?」といったお悩みを解決します。

ぜひ、最後までご覧ください。

出典元:
鳥取県福祉保健部子育て王国推進局子育て応援課「産前・産後ケアに関するアンケート調査報告書」
(2019年6月12日最終閲覧)

出生前診断とは

種類の説明に入る前に出生前診断とは何かを理解しておきましょう。

出生前診断について/出生前診断の目的

出生前診断(出生前検査)とは、赤ちゃんの先天異常を確認するために行われる検査です。広い意味では妊婦健診で行われている超音波検査なども含まれていますが、一般的に出生前診断とは、先天異常の中でも染色体異常を検査する出生前遺伝学的検査を指します。妊婦健診とは異なり希望者が検査を受けることができます。

出生前診断の目的は事前に赤ちゃんの状態を「知る」ことです。もし赤ちゃんの先天異常が分娩前にわかったら、適切な対応ができる病院に移り、万全の体制で赤ちゃんを迎えることができます。出生後に知るのでは対応が遅れてしまうため、命に関わります。逆に知ることで人工中絶など、命の選別に繋がってしまうという指摘もあります。また、障害をお持ちの方を否定していることに繋がるとの意見もあります。

重要なのはご自身で納得できる道を選択することです。出生前診断を受けなければならない、受けてはいけないなど正解はありません。

 

出生前診断の実施件数増加の背景

毎日新聞によると、出生前診断の実施件数は2006年から2016年までの10年で約2.4倍に急増しています。増加の背景の1つとして晩婚化による妊娠年齢の高齢化が考えられます。

内閣府の調査によると、2016年の第1子出産時の平均年齢は30.7歳ですが41年前の1975年は25.7歳で、約5.0歳、出産の時期が遅くなっています。そのため、1993年に「高齢出産」の定義が「30歳以上の初産婦」から「35歳の初産婦」に変更されました。 妊娠年齢が高くなればなるほど、ダウン症などの染色体異常が起きやすくなると言われています。LabCorpによると、25歳の妊婦の場合、1/1082の確率ダウン症候群が発生するのに対し、40歳の妊婦の場合は1/87の確率と差は歴然です。

出典元:
内閣府「平成30年版 少子化社会対策白書 全体版」
(2019年6月12日最終閲覧)
毎日新聞「出生前診断、10年で2.4倍 35歳以上で25% 16年7万件」
(2019年6月12日最終閲覧)
LabCorp「クアトロテスト™(母体血清マーカー検査)」
(2019年6月13日最終閲覧)

出生前診断の種類(確定診断と非確定診断)

では出生前診断の中でも自分はどの検査を受けるべきか考えていきましょう。そのために、出生前診断には大きく分けると確定診断と非確定診断の2種類の検査があることを押さえておきましょう。

確定診断

確定診断とは診断を確定することができる検査です。検査精度はほぼ100%で検査結果は陰性か陽性がはっきりと診断されることが特徴です。しかし、デメリットとしてリスクが存在します。リスクがあることから、侵襲的検査とも呼ばれています。確定診断には主に羊水検査と絨毛検査があり、それぞれリスクの程度や検査を受けることができる妊娠週数が異なります。後ほどこれらの違いについて詳しくご説明します。

非確定診断

非確定診断は、確定診断に比べてリスクは少ないですが、検査の精度は100%ではなく、染色体異常の「可能性」までしかわからない検査です。結果は確率で表示(Ex.◯◯分の1の確率で染色体異常を認める)される検査がほとんどでしたが、最近では新型の出生前診断が開発され、陰性陽性と表示される検査もあります。

その他にも、検査でわかること、費用、検査の実施時期などが異なりますので、後ほどご説明します。それぞれの検査の利点を生かし、非確定診断を受け、染色体異常の可能性が高いと指摘された場合のみ確定診断を受ける流れが一般的です。このような流れで受診することで、できる限りリスクを避けながら染色体異常を発見することができます。

2種類の確定診断

先ほどご説明した通り、確定診断には羊水検査と絨毛検査の2つがあります。この章では、それぞれの検査の違いと、それぞれの検査がどんな方におすすめなのかを詳細にご説明します。

羊水検査

羊水検査とは胎児の周りを満たしている羊水を採取し、染色体異常を確認する検査です。胎児は生まれた時の練習として、羊水を飲んだり、おしっこをするため、羊水中には胎児由来の細胞が含まれています。しかしそのままでは検査ができないため、培養して胎児細胞を増やしてから、顕微鏡で染色体の異常を調べます。絨毛検査に比べると検査方法が簡単なため、実施している施設が多いです。

羊水検査の詳細

  • 検査時期
    検査可能時期は羊水が十分に満たされる妊娠15週〜16週以降です。絨毛検査に比べて検査可能時期は遅いです。検査後約2〜4週間で結果が出ます。
  • リスク
    羊水検査は羊水穿刺(お腹に針を刺して羊水を採取すること)の影響で、流産(0.3%)、破水、出血、子宮内感染症、羊水塞栓症などのリスクがあります。絨毛検査に比べて流産の可能性は低いです。しかし、この時期の流産率は1.7%(12週〜22週目の後期流産)なので、羊水検査の流産率はそこまで高くない値であると指摘する専門家もいます。
  • 費用
    約6万円〜20万円です。相場は約15万円と言われており、絨毛検査とおおよそ同じ価格帯です。
  • 精度
    胎児の細胞を採取するためほぼ100%です。しかし、稀に染色体モザイクと呼ばれる胎児が正常な染色体と異常な染色体を持っている状態が観測されます。その場合はうまく検査結果が出ない可能性があるため、羊水検査は「ほぼ」100%と言われています。このような検査の限界は全ての出生前診断に存在します。確実な検査はありません。
  • 検査項目
    ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)、ターナー症候群(モノソミーX)、クラインフェルター症候群、転座(染色体の一部が切断され、他の染色体に付着してしまう状態)や、欠失(染色体の一部が無い状態)などが検査対象です。
    トリソミーとは、通常2本対で存在する染色体が3本存在する疾患で、モノソミーは1本しか存在しない数的異常です。数字は染色体番号を、アルファベットは性染色体の種類(男がYで女がX)を表しています。症状は、どの染色体に異常が起きるかで異なります。
    例えば、通常2本あるはずの21番染色体が3本存在する21トリソミー (ダウン症)は運動や知的能力の発達が遅いですが、女性の性染色体(XX)が1本しかないモノソミーX (ターナー症候群)はほとんどの場合が通常レベルの知的能力を持っています。
  • 羊水検査はこんな妊婦さんにおすすめ
    ①とにかく精度が高くて、陰性か陽性か一回の検査ではっきりさせたい。
    ②早く診断ができることよりも流産のリスクを下げたい。
    ③近くの施設で受けたい。

絨毛検査

絨毛検査とは、胎盤の一部である絨毛の細胞を採取し、染色体異常がないかどうか確認する検査です。採取する絨毛細胞は受精卵からできているため、胎児と同じDNAを検査することができます。絨毛検査には検査法が2つあり、膣内にカテーテルを挿入して絨毛細胞を採取する「経膣法」と羊水検査と同じくお腹に針をさして絨毛細胞を採取する「経腹法」です。

絨毛検査の詳細

  • 検査時期
    絨毛検査の検査可能時期は妊娠11週〜14週です。それより早く検査をしてしまうと四肢切断の合併症を伴う可能性があります。検査後約2週間で結果が出ます。
  • リスク
    絨毛検査のリスクは流産(1%)、出血、破水、腹膜炎などの感染症が挙げられます。羊水検査のリスクと比べて流産の確率が高いです。
  • 費用
    約10万円〜15万円です。羊水検査と絨毛検査では費用に大きく差はありません。
  • 精度
    ほぼ100%になります。羊水検査と同じく、染色体モザイクが観測される場合もあります。
  • 検査項目
    ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)、ターナー症候群、クラインフェルター症候群などの数的異常と、転座(染色体の一部が切断され、他の染色体に付着してしまう状態)や、欠失(染色体の一部が無い状態)などの染色体の構造上の異常などが検査対象です。
  • 絨毛検査はこんな妊婦さんにおすすめ
    ①とにかく精度が高くて、可能性ではなく陰性か陽性か一回の検査ではっきりさせたい。
    ②早く検査を受けて家族と話し合う時間を作りたい。

4種類の非確定診断

スクリーニング検査として利用されている非確定診断は、確定診断よりも種類が多いです。日本で普及している出生前診断を4つご紹介します。

母体血清マーカー検査(クアトロテスト)

母体血清マーカー検査は母体血中に含まれる成分から染色体異常がないか確認する検査です。4つの成分(hCG,AFP,uE3,Inibin A)を検査することからクアトロテストとも呼ばれています。これらの成分は赤ちゃんまたは胎盤由来の成分で、通常、妊娠が進むにつれて増減しますが、赤ちゃんが対象の疾患を患っている場合も増減します。

母体血清マーカー検査では、この4つの成分の増減が基準値(カットオフ値)よりも高い値が検出された場合、染色体異常が高いと判断されます。確定診断とは異なり、胎児細胞を直接調べる検査ではないため精度が下がります。

母体血清マーカー検査(クアトロテスト)の詳細

  • 検査時期
    妊娠15週目〜18週目に検査をします。検査時期は他の出生前診断と比べると遅いです。検査後約10日で結果が出ます。
  • リスク
    血液検査なので侵襲的な確定診断とは異なり、リスクはありません。
  • 費用
    約1万円〜3万円です。
  • 精度
    精度は約80%です。結果が確率で算出されるため(Ex.〇〇分の1の確率で21トリソミーを認める)数字をどのように解釈するかを事前に決めておく必要があります。
  • 検査項目
    21トリソミー、18トリソミー、開放性神経管欠損症
  • 母体血清マーカー検査はこんな妊婦さんにおすすめ
    ①なるべくリスクが低い検査を受けたい。
    ②検査項目や精度の高さよりも検査費用を安く抑えることを重視している。

超音波検査(胎児ドック)

胎児ドックとは、染色体異常を患う胎児の特徴であるNTを測定し、染色体異常の可能性を検査します。NTとは胎児の首の後ろのむくみを指します。NT測定では赤ちゃんが一定の体勢のときに正面から撮影をしなければ見え方が変わってしまうことから、熟練した検査技術が必要です。

つまり、妊婦健診の超音波検査ではNTの厚さを正確に測定できないこともあるため、専門家のセカンドオピニオンを受けることが重要です。ただし、NTは正常な赤ちゃんにも存在するため、厚いからといって必ずしも染色体異常につながるわけではありません。

超音波検査(胎児ドック)の詳細

  • 検査時期と検査項目
    胎児ドックは検査時の妊娠週数によって検査対象が異なります。妊娠初期(妊娠10週目〜13週目)ではNTを計測し、21トリソミー(ダウン症)などの染色体異常の可能性を算出します。妊娠中期(妊娠20週目〜30週目)では赤ちゃんの臓器が観察しやすいため、形態的な奇形なども検査することができます。具体的には以下の項目が検査項目です。
    基本のスクリーニング項目
    ■頭部:大脳・小脳・脳室(脳内部の脳脊髄液で満たされた部分)・脈絡叢(脳室内で血管が発達した部分)
    ■顔面:鼻骨・口唇・眼球
    ■心臓:心臓の軸・4つの部屋・大血管の走行
    ■胸部:肺・胸水
    ■腹部:胃泡・肝臓・腸管・腎臓・膀胱
    ■背骨:脊椎(頚椎・胸椎・腰椎・仙骨)
    ■四肢:左右の手足
    ■臍帯(へその緒):血管の数(3本)・胎盤付着部位
    ■性別
    出典元: 恵比寿の産婦人科 妊婦健診なら広尾レディース「高齢出産や家族歴などで不安のある方に胎児初期精密検査のご案内」
    (2019年6月13日最終閲覧)
  • リスク
    超音波を当てるだけなので、特にリスクはありません。
  • 費用
    8千円〜6万円です。
  • 胎児ドックはこんな妊婦さんにおすすめ
    ①なるべくリスクが低い検査を受けたい。
    ②精度の高さよりも検査費用を抑えることを重視している。
    ③染色体異常だけではなく、形態的な異常も発見したい。

コンバインド検査

コンバインド検査とは超音波検査と母体血清マーカー検査を組み合わせて行う検査です。4つの成分を検査するクアトロテストではなく、2つの成分を検査する母体血清マーカー検査を使用します。二つの検査を組みあわせて行うことで検査精度が高くなっています。

    コンバインド検査の詳細

  • 検査時期
    妊娠11週目〜13週目で検査ができます。結果は検査後約2週間で出ます。
  • リスク
    採血と超音波を当てるだけで検査ができるので、特にリスクはありません。
  • 費用
    約3万円です。母体血清マーカー検査と価格帯は近いです。
  • 精度
    精度は約83%です。
  • 検査項目
    21トリソミー(ダウン症候群)と18トリソミー(エドワーズ症候群)の2つです。クアトロ検査とは異なり、神経管閉鎖不全症は検査対象外になります。
  • コンバインド検査はこんな妊婦さんにおすすめ
    ①できるだけリスクの小さい検査を受けたい。
    ②精度の高さよりも検査費用を抑えることを重視している。
    ③できるだけ早く検査を受けたい。

NIPT(Noninvasive prenatal genetic testing 新型出生前診断)

2011年に米国が開発した採血のみでできる新しい検査です。母体の血液中には母体のDNAだけでなく胎児由来のDNA断片が混ざっています。そのため、採血のみで胎児のDNA情報分析が可能です。

現在日本におけるNIPTは臨床研究として提供されています。そのため、検査を受ける条件を設けている医療機関もあります。例えば、高齢妊娠である35歳以上の妊婦に限定していること、遺伝的カウンセリングを最低2回行うことなどです。条件を満たしている医療機関を認定施設と言います。

このような規制を設ける理由は、NIPTは簡便さが故に医師であれば誰でも検査が可能なため、妊婦が出生前診断について十分に理解しないまま検査を受けてしまい、かえって混乱することを防ぐためです。しかし、実際にはNIPTが普及している米国などの検査会社と提携し、条件を設けず検査を行なっている医療機関もあります。

NIPT(Noninvasive prenatal genetic testing 新型出生前診断)の詳細

  • 検査時期
    妊娠初期の10週目から検査が可能です。従来の出生前診断と比べても早く検査ができることで、検査後に夫婦で話し合う時間を多く確保できます。結果は検査後約10日から2週間で出ます。
  • リスク
    採血のみなのでリスクはありません。
  • 精度
    検査精度(陰性的中率を表す特異度)は99,99%とかなり高いです。さらに従来の非確定診断とは異なり、結果は陰性か陽性がはっきりと出ます。そのため、結果が陰性の場合は羊水検査を受ける必要がありません。陽性的中率を表す感度も90%〜99%と従来の非確定診断とは一線を画しています。
  • 検査項目
    ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)、ターナー症候群(モノソミーX)、を含む全染色体の数的異常と、微小欠失症候群(染色体の一部がかけていたり何らかの異常が起こってしまう疾患)である、1p36欠失症候群、4p欠失症候群、5p欠失症候群、15q11.2欠失症候群、22q11.2欠失症候群、また性別も検査項目です。従来の出生前診断に比べて検査項目が多いです。
    ただし認定施設では検査項目がダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)の3つのみに限られています。
  • 費用
    約20万円です。検査項目によって費用は変化します。少し高額ですが、病院によっては陽性時の羊水検査費用を含めた料金で診断を行なっている施設もあります。
  • NIPTはこんな妊婦さんにおすすめ
    ①できるだけリスクの低い検査を受けたい。
    ②検査費用よりも、検査精度や検査項目の多さを重視している。
    ③できるだけ早く検査を受けたい。

NIPTについては、詳しくまとめたコラムがありますのでそちらも合わせてご覧ください。

NIPT(新型出生前診断)とは?検査内容とNIPTの問題点

まとめ

一口に出生前診断と言っても受診できる週数、精度、リスク、検査項目、などそれぞれの検査に特徴と違いがあります。ご夫婦で納得した決断をするためにも、出生前診断の情報を十分に集め、話し合いましょう。もし不安なことがあればかかりつけの産婦人科医師だけではなく、専門医にも相談してみましょう。

産婦人科医 奥野幸彦 院長

医師監修:産婦人科医 奥野幸彦 院長

自己紹介

産婦人科医としてこれまで多くの相談を受ける中で、妊婦の方々がご出産までの約10ヶ間様々な不安な気持ちを抱えていることを知りました。そんな不安が少しでも減るように日々の治療・検査を通して妊婦の方々に向き合っていきます。

略歴

  • 1977年 大阪大学 医学部卒業
  • 1977年-1985年 大学病院・市民病院・救急病院などで勤務
  • 1986年 産婦人科・外科・内科を備える奥野病院を開院
  • 2000年 ジェンダークリニックを開院
  • 2017年 八重洲セムクリニックを開院

保有資格等

  • 日本医師会 認定産業医
  • 国際出生前診断学会会員
  • 日本産婦人科学会 認定医
  • 母体保護法指定医