パトー症候群(13トリソミー)とは?治療法、症状、予後などを解説!

パトー症候群とは通常2本しかない13番染色体が3本に増えてしまう13トリソミーの別名です。

最近では出生前診断の技術が進歩し、パトー症候群の有無が出生前に分かると各所で報道されていることから、パトー症候群という名前を耳にしたことがある妊婦さんも多いと思います。

しかし、たった1本染色体が多いだけで人ににどんな影響を及ぼすのか、いまいちピンとこない方も多いと思います。

このコラムではパトー症候群とは一体どんな病気なのか、どんな症状が出るのか、治療方法などパトー症候群について詳しく解説します。ぜひ、最後までご覧ください。

パトー症候群(Patau syndrome)とは

通常、細胞の核の中には染色体が含まれています。染色体は2つで1対を成していて全部で22対と1対あります。

それぞれ22対は常染色体と呼ばれ、基本的に大きい順に番号が振られており、(例外あり)、残りの1対は性染色体と呼ばれ、男か女かを決める染色体です。

パトー症候群とは13トリソミー(英語ではtrisomy13)とも呼ばれていて、染色体のうち、13番目に大きい「13番染色体」の数が1本多く3本ある染色体異常のことです。出生児の5,000人から12,000人に1人の確率で発症します。

トリソミーという名前に聞き馴染みがない方も多いかもしれませんが、河合蘭の著書「出産ジャーナリストが見つめた現状と未来」によると、実は着床しない原因や、流産の原因の多くはこの染色体の本数違いであると言われています。

具体的には、40歳の受精卵は約8割の割合で染色体異常が発生しており、もし着床できたとしても、約2割が妊娠12週目までに流産してしまうと言われています。

トリソミーが起こる原因ははっきりとはわかっていませんが、妊婦の年齢が高くになるにつれて、パトー症候群などの染色体異常の可能性も高くなります。

常染色体トリソミーの中でも出生例のある染色体は21番染色体(21トリソミー/ダウン症候群)、18番染色体(18トリソミー/エドワーズ症候群)、そして13番染色体(13トリソミー/パトー症候群)の3つの染色体です。

出典元:
河合蘭「出産ジャーナリストが見つめた現状と未来」Kindle版位置No.413〜426
(最終閲覧2019年6月17日)
小児慢性慢性特定疾病情報センター「13トリソミー症候群概要」
(最終閲覧2019年6月17日)
NIPTコンソーシアム「先天性疾患と染色体疾患」
(最終閲覧2019年6月17日)

パトー症候群の合併症

パトー症候群は遺伝子の量的不均衡が原因でさまざまな合併症を伴います。

先ほどご説明した3つの主要なトリソミーの中でもパトー症候群は他の二つのトリソミーに比べ、寿命が短かったりと重篤になりやすい傾向があります。

合併症の数や程度は人によって異なりますが、特に高頻度で起こる症状としては重度の知的障害、顔や手足の奇形、心疾患、難聴、生殖器の異常乳幼児期の無呼吸発作、発達障害などが挙げられます。

根本から治療する方法はないため、合併症に対する支持療法が行われます。支持療法とは、治療による副作用の予防策や症状の軽減を目的とする治療です。

以下、パトー症候群の症状で考えられる合併症です。

心臓の疾患

通常、出生時に何らかの心疾患を患っている赤ちゃんは約100人中1人(1%)の割合で存在しますが、パトー症候群を患う赤ちゃんはその割合が約10人中8人(80%)と大きく上回っています。

具体的には心疾患の中でも、先天性心血管異常(心臓の血管に異常をきたすこと)右胸心(心臓が右側に位置すること)などが挙げられますが、症状はさまざまです。

脳の疾患

脳の疾患には全前脳胞症、小頭症などが挙げられます。

脳は人の行動を司る部位なので他の部位に比べ、それぞれの疾患の症状は多岐に渡ります。それぞれの疾患について詳しく説明します。

全前脳胞症

全前脳胞症とは、通常、前脳胞という部分が二つに分裂して大脳になるはずの部位が、分裂せず1つのままになる疾患です。

大脳の働きが弱くなり、知的障害、運動障害、てんかん(痙攣などの発作が起こること)などの症状が現れます。また、前脳胞同様に、顔も分裂が小さいことがあります。

具体的には、眼間狭小(目の間が狭い症状)、単眼(目が一つしかない症状)、口唇裂・口蓋裂(唇や唇の天井歯茎が避けてしまう症状)象鼻など、顔の中心に奇形が生じることもあります。(程度にはばらつきあり)

全前脳胞症には他にも、低体温、呼吸不全、摂食障害、嗅神経・視神経の低形成などの症状もみられます。

小頭症

小頭症とはは赤ちゃんが小さい頭で生まれるか、出生後に頭の成長が止まってしまう疾患です。

脳の成長が遅い、または頭蓋骨の成長が遅いことが原因で発症します。

主にてんかん、脳性麻痺、学習障害、難聴、視覚障害などの症状がでる可能性があります。小頭症の根本的な治療はまだないため、合併症の症状を抑える治療を施すのみです。

目の疾患(眼症)

小眼球症、虹彩コロボーマ、網膜異形成などが挙げられます。

目の疾患は程度によりますが、場合によっては視覚障害が見られる場合もあります。それぞれの疾患について詳しく説明します。

小眼球症

小眼球症とは先天的に眼球が小さい疾患です。そのためさまざまな視覚障害をもたらします。視力は小眼球症を患う方の54%が0.3未満です。

白内障(瞳の奥にある通常は透明な水晶体が白く濁ることで、ものがぼやけて見えるなどの症状を及ぼす疾患)

緑内障(視神経に異常が起き、少しずつ見える範囲が狭くなっていくなどの症状を及ばす疾患)などの合併症を引き起こす場合があります。

小眼球症は未だ原因が十分に解明されておらず、小眼球症の効果的な治療法はまだありません。合併症に対する治療を施すのみとなります。

虹彩コロボーマ

虹彩コロボーマとは目に入る光を調整する虹彩が一部欠損してしまう疾患です。コロボーマとは一部が欠損している状態を指します。

目に入る光をうまく調整できないため、通常よりも光を眩しく感じやすく、サングラスが必要になる場合があります。白内障や緑内障などの合併症を起こすこともあります。

また、虹彩コロボーマに対して有効な治療が無いため、合併症に対して治療を施すのみとなります。

網膜異形成

網膜異形成とは網膜(眼球の一番奥の壁であり、多くの視神経が繋がっている部分)が異常に形成されることです。重度になると視覚異常が起こります。

形態的異常

形態的異常とは手足、頭蓋骨、などが正常な形態と異なるものです。頭蓋骨部分欠損、手指の屈曲拘縮(くっきょくこうしゅく)、多指症などが挙げられます。

形態異常の程度次第ですが、直接命に関わらないものもあるので1つの個性として捉えてください。それぞれのそれぞれの形態的異常について詳しく説明します。

頭蓋骨部分欠損

頭蓋骨部分欠損とは、頭蓋骨が一部欠損しているものです。大きく欠損してしまうと頭の形が変わってしまったり、食事や会話に不自由が起きてしまいます。

そのため、チタンなどの金属やレジン、アパタイトなどでインプラント(人工骨)を埋め込むか、自分の他の部分の皮膚や骨などを再利用するなどして治療をします。

手指の屈曲拘縮(くっきょくこうしゅく)

手指の屈曲拘縮(くっきょくこうしゅく)とは、手指の関節が固まってしまい動かないまたは動きが制限されている状態のことです。

物を掴むことに支障がでる可能性もありますが、程度によってはリハビリなどで治る可能性もあります。多指症とは指の数が多い疾患です。

形態的な異常だけではなく、ものを掴む際の機能的な異常も起こることがあります。そのため、症状の程度によりますが、過剰な指を取り除く、または再構築するなどの手術を行います。

その他の形態的異常

その他にも、足には踵の突出、幅の狭い凸型の爪、耳には耳介(じかい。外耳の一部)の変形、眼窩上隆起(がんかじょうりゅうき)が浅く目の上の眉毛辺りが浅い特徴的な顔立ちがみられます。

手は、頸部背面上に弛緩した皮膚の襞猿線(単一手掌屈曲線)や第5指単一屈曲線(特徴的な手相を持っていること)が見られたりもします。

その他

鼠径ヘルニア(そけいヘルニア)、生殖器の疾患などが挙げられます。

鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアとは、お腹周りの筋肉が薄い部分から腸や内臓脂肪が押し出されてしまう疾患です。

膨らみを指で押すと戻ることもありますが、病気が進行すると、周囲の筋肉に締め付けられて戻らなくなる嵌頓 (かんとん)状態になってしまいます。

嵌頓状態では腸の血の巡りが悪くなり、痛み、吐き気、嘔吐などの症状がでてしまいます。腸がでてしまう穴にメッシュをかぶせる手術を行うことで治療できます。

生殖器

生殖器の異常には性別によってさまざまな異常が考えられます。

男児では小陰茎症(陰茎が小さい疾患)停留精巣(睾丸が袋の中に入っていない疾患)が発生し、女児で双角子宮(子宮が二つに分かれてしまう疾患)が発生します。

発生頻度はかなり高いです。

他にも、呼吸器の合併症や、消化器(消化管)の合併症なども発生する可能性があります。特に、乳幼児期には無呼吸発作が発生しやすいので気管挿管を行う可能性もあります。

寿命

パトー症候群は出生前に流産してしまうことも少なくなくありません。また、病態にもよりますが、80%の赤ちゃんが1ヶ月以内に死亡し、1年生存率は10%未満とも言われています。

日本では19歳まで生きられたケースもありますが、生存期間の中央値は10日です。

出典元:
MSD マニュアルプロフェッショナル版「13トリソミー(パトウ症候群;Dトリソミー)
(最終閲覧2019年6月17日)
徳洲会グループ「小児科の病気:先天性心疾患」
(最終閲覧2019年6月17日)
小児慢性慢性特定疾病情報センター「全前脳胞症 概要」
(最終閲覧2019年6月17日)
てんかんinfo「てんかんとはどんな病気?」
(最終閲覧2019年6月17日)
厚生労働省検疫所「小頭症(ジカウイルス感染症の関連を含む)」
(最終閲覧2019年6月17日)
難病情報センター「眼科疾患分野 小眼球(症)(平成22年度)」
(最終閲覧2019年6月17日)
一般財団法人太田総合病院「やさしい白内障のおはなし」
(最終閲覧2019年6月17日)
Santen「緑内障とは」
(最終閲覧2019年6月17日)
日本小児眼科協会「お知らせ 一般の皆様へ
(最終閲覧2019年6月17日)
執行クリニック「そけいヘルニアとは Iuguinal Hernia」 (最終閲覧2019年6月17日)

出生前診断でパトー症候群を事前に発見しましょう。

パトー症候群に早期発見することが大切です。パトー症候群とは先ほどご説明した通り重篤な合併症を患っている可能性が高く、生まれすぐの処置が必要不可欠になります。

そのため、分娩より前にパトー症候群であるとわかっていれば総合病院で出産をし、すぐにNICU(Neonatal Intensive Care Unit)と呼ばれる、新生児特定集中治療室で治療が受けられる環境を用意できます。

そのため早期発見のためには出生前診断を受ける方も増えています。

検査できる先天性異常にはパトー症候群(13トリソミー)だけでなく、エドワーズ症候群(18トリソミー)やダウン症候群(21トリソミー)などの>ターナー症候群(モノソミーX)、クラインフェルター症候群の数的異常や、

転座(染色体の一部が切断され、他の染色体に付着してしまう状態)や、欠失(染色体の一部が無い状態)など豊富です。

検査には羊水穿刺によって検査する羊水検査や、採血のみで診断ができる母体血清マーカーテストやNIPT、エコー画像から可能性を割り出す超音波検査などさまざまな種類があります。

検査によって精度、対象疾患、結果の表示方法、リスクの有無などが異なります。

出生前診断の種類に関しては以前記事にしているのでそちらも合わせてご確認ください。

NIPTコラム出生前診断の種類や検査内容とは?わかりやすく解説!

産婦人科医 奥野幸彦 院長

医師監修:産婦人科医 奥野幸彦 院長

自己紹介

産婦人科医としてこれまで多くの相談を受ける中で、妊婦の方々がご出産までの約10ヶ間様々な不安な気持ちを抱えていることを知りました。そんな不安が少しでも減るように日々の治療・検査を通して妊婦の方々に向き合っていきます。

略歴

  • 1977年 大阪大学 医学部卒業
  • 1977年-1985年 大学病院・市民病院・救急病院などで勤務
  • 1986年 産婦人科・外科・内科を備える奥野病院を開院
  • 2000年 ジェンダークリニックを開院
  • 2017年 八重洲セムクリニックを開院

保有資格等

  • 日本医師会 認定産業医
  • 国際出生前診断学会会員
  • 日本産婦人科学会 認定医
  • 母体保護法指定医