ダウン症がわかる出生前診断|あなたは受ける?受けない?

妊娠中、おなかの中の赤ちゃんが元気に育ってほしいと願う反面、ふとした時に「もし赤ちゃんにダウン症などの病気があったらどうしよう」と心配になってしまうことあります。

しかし、心配しているダウン症が一体どのような病気で、どのような特徴があるのか詳細を知らないまま漠然と将来の不安に直面している妊婦さんも多いと思います。

このコラムではダウン症とはどのような病気で、どのような症状が見られるのかといったダウン症の基礎知識だけでなく、赤ちゃんのダウン症がわかる出生前診断とはどのような検査なのか、出生前診断の実例を用いてご説明します。

知らないことに対して不安を持つのは当然です。ぜひ最後までお読みいただき、少しでも不安を取り除いてください。

ダウン症とは

正常な染色体は2本ずつ存在していますが、何らかの異常で21番染色体が3本になる「21トリソミー」が発生します。これがダウン症候群です。

生まれてくる赤ちゃんの700人から1000人に1人の頻度で発症します。

ダウン症は妊婦さんの年齢が高くなると発症しやすくなる

妊婦さんの年齢が20歳の場合、ダウン症の発症確率は1/2000なのに対し、35歳の場合で1/365、40歳の場合で1/100と年齢と共に発症確率は高くなっていきます。

特に高齢出産と呼ばれる35歳以降になると確率が急激に高くなります。

女性は生まれた時に一生分の卵子が作られます。そのため、母体年齢の上昇と共に卵子が老化し、ダウン症の発症確率が高まります。

卵子の老化が原因でおこるリスクは、ダウン症発症確率が上がることだけではなく、他全ての染色体異常の発生確率が高まることも挙げられます。

そのためエドワーズ症候群(18番染色体が3本存在する染色体異常)や、パトー症候群(13番染色体が3本存在する染色体異常)などの発症率が上がったり、染色体異常が原因で受精卵の段階で流産しやすくなります。

また年齢に関係ない、両親の染色体の形が原因で発症する転座型は全体の5%ほど存在します。

ダウン症を持つ方の外見上の特徴

大人しく滅多に泣かないので筋緊張低下(自分の体を支える筋肉のはりが弱くなること)が起き、特徴のある顔立ちをしています。

また、背中やお尻あたりに余分な皮膚があったり、猿線(単一手掌屈曲線)と呼ばれるまっすぐの線のある特徴的な手相を持っています。

ダウン症と聞くと大変な病気であると感じる方もいますが、1つの個性であると捉えてください。

ダウン症の症状

ダウン症は合併症を患う可能性があります。現状、ダウン症の根本的な治療法はありませんが、合併症は治すことができるものもあります。

主なダウン症の合併症の症状をご紹介します。

脳の合併症

  • 知的障害:軽度から重度まで程度にばらつきがあります。
  • 自閉的行動:人の表情や雰囲気を察して行動すること、コミュニケーションが苦手だったり、同じ行動を繰り返したりします。
  • 言語能力と運動能力の遅れ:話す能力や運動する能力に遅れがあります。
  • アルツハイマー病:記憶や思考能力がゆっくりと障害され、末期になると日常の些細な作業もできなくなってしまう病気です。現在、特に治療法はありません。

消化器の合併症

  • 腸の形態異常
  • ヒルシュスプルング病:消化器の動きを制御する細胞がないため、重い便秘症や腸閉塞などが起きる疾患です。手術することで治療することができます。
  • セリアック病:小麦や大麦などに含まれるタンパク質のグルテンに耐性が無く、吸収不良が起きてしまう疾患です。グルテンの含まれない食事を取ることで1〜2週間で回復します。稀に症状が持続する倍もあります。

内分泌系の合併症

  • 甲状腺機能低下症:甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンのバランスが崩れてしまう疾患です。元気がなくなる、むくみやすくなるなどはっきりした症状がないため発見されにくい疾患です。ホルモン剤を飲んで治療します。
  • 糖尿病:すい臓で作られているインスリンが不足し、血糖値が高くなる疾患です。食事の改善、運動を行う、または内服薬や注射薬による治療が行われます。

目と耳の合併症

  • 白内障:水晶体が白く濁ってしまい視力が低下する疾患です。白く濁った部分を取り除き、眼内レンズと呼ばれる人工のレンズを入れることで治療します。
  • 緑内障:目から入ってきた情報を脳に送る視神経に障害がおき、視野が狭くなる疾患です。治すことはできないので進行を遅らせる治療を行います。
  • 難聴
  • 耳の感染症

発育

  • 低身長
  • 肥満

心臓

  • 心腔の形成異常

筋肉と骨

  • 第1頸椎と第2頸椎の連結が不安定
  • 緩い関節
  • 発達速度

    身体、精神、知能の発達はゆっくりですが成長していきます。発達のスピードには個人差がありますが約2倍の時間をかけて寝返りや一人歩きができるようになっていきます。

    出典元:
    MSD マニュアルプロフェッショナル版「ダウン症候群(21トリソミー)(ダウン症候群;Gトリソミー)」
    (2019年6月28日最終閲覧)
    特定非営利活動法人日本小児外科学会「ヒルシュスプルング病」
    (2019年6月28日最終閲覧)
    MSD マニュアル家庭版「セリアック病 (セリアックスプルー、グルテン腸症、非熱帯性スプルー)」
    (2019年6月28日最終閲覧)
    全日本民医連「甲状腺の病気 意外に多い、機能亢進症・機能低下症」
    (2019年6月28日最終閲覧)
    知りたい!糖尿病「糖尿病とは?原因と症状(初期症状)」
    (2019年6月28日最終閲覧)
    日テレNEWS24「ダウン症のある人「幸せに思う」90%以上」
    (2019年6月28日最終閲覧)
    兵庫医科大学出生前診断 「ダウン症をご理解いただくために」
    (2019年6月28日最終閲覧)
    NHKスペシャル取材班/野村優夫「出生前診断受けますか?納得のいく「決断」のためにできること」P50
    (2019年6月28日最終閲覧)

    ダウン症がわかる出生前診断とは

    出生前診断(出生前検査、出生前遺伝学的検査)とはお腹の中の赤ちゃんが病気や障害を持っているか確認する検査です。

    生まれてくる胎児がダウン症かどうかは出生前診断で検査ができます。

    年々検査の実施件数は増加しており、10年間で2.4倍に増加しました。今後も実施件数は増えていくと予想されます。

    通常妊婦健診で行われている超音波検査も出生前診断の一種ですが、染色体異常の有無を確認する出生前遺伝学的検査には精度が劣ります。

    出典元:
    毎日新聞「出生前診断、10年で2.4倍 35歳以上で25% 16年7万件」
    (2019年6月28日最終閲覧)

    アメリカやフランスなどの海外における出生前診断

    アメリカやフランスなどの海外の出生前診断先進国では、すでに胎児の頃から普通の健康診断のように検査(胎児診断)をしています。

    もちろん、出生前診断を全員が受けなければならないという訳ではありません。 例えば、アメリカで76年に策定された国家遺伝病法の基本的な考え方は以下のようなものです。

    「先天異常は治療法がないので予防しよう。危険性の高い人は羊水診断を受けることができる。しかし,強制してはいけない。遺伝子の教育に力を入れ,現場では丁寧なカウンセリングが必要」
    出典元:
    製作責任者:立岩真也「出生前診断・選択的中絶について・外国」
    (2019年6月28日最終閲覧)

    出生前診断を受けた人の声

    出生前診断は受けたことがある人にしかわからない葛藤や苦しみもあります。

    どうして出生前診断を受けようと思ったのか、出生前診断の中でもどんな検査を選んだのか、出産に迷いはなかったのかなどをご紹介します。

    ダウン症の可能性を意識し始めた理由

    ダウン症の可能性を意識し始めたきっかけは「高齢妊娠だとダウン症の可能性が高いとネットで見たから」「不妊治療を受けている友人から聞いたから」などさまざまです。

    中には「妊婦健診で行った超音波検査(エコー検査)で産婦人科の医師にNTと呼ばれる首の後ろのむくみを指摘されたから」といった理由もあります。

    医師の中には実際には技術が無く、NTを正確に測ることができないのもかかわらず、訴訟や裁判沙汰になることを恐れ、少しでもNTを確認したら妊婦さんに伝えている方もいます。

    出生前診断の種類

    出生前診断には大きく分けて確定診断と非確定診断の2種類があります。

    確定診断とは穿刺針の影響で流産や破水などのリスクが伴う(侵襲的検査)代わりに、検査精度が高く、ダウン症陰性か陽性かがほぼ100%判断できる検査です。具体的には羊水検査と絨毛検査があります。

    反対に非確定検査とはダウン症の可能性までしか検出できない代わりに、リスクが少ない検査です。

    具体的には、母体血清マーカー検査(採血した母体血中の4つの成分の量を確認する検査)、NIPTと呼ばれる新型出生前診断(2013年に臨床研究として導入された、採血した母体の血液中に含まれるDNAを確認する検査)などがあります。

    一口に「ダウン症がわかる検査」といっても、検査精度や検査方法、対象になる疾患、いつまでに診断結果が出るか、費用など細かい違いがありますので詳しく知りたい方はこちらのコラムもご覧ください。

    出生前診断の種類や検査内容とは?わかりやすく解説!

    「出産」か「妊娠中絶」か迷いはなかったのか

    結論を決めている方もいれば、自分の中で、産むか妊娠中絶か矛盾する思いの間で葛藤した末に決断する方もいます。

    羊水中の胎児由来の細胞を採取することで染色体異常を検査できる羊水検査を受け、事前にダウン症と知った上で出産した方の意見は以下のようなものです。

    「ダウン症であれ何であれ、僕と嫁の子ども。『ダウン症だからうちの子じゃない』なんて全く思わなかった。元気に生まれてくるんだったら、生まれてきてほしいし。ただ(育児で)大変になるのは嫁。『産んでもらってええか』という話はしましたね」
    「おろせって言われたら、そういう人とは(夫妻を)やっていきたくないと思ってたんですよ。(夫は出産に)すごく前向きだったので、『ちゃんと助けてね』って。話は5分くらいで終わりました」
    出典元:
    YAHOO!JAPANニュース「わが子がダウン症だったら?― 出生前診断を受けた夫妻の選択」
    (2019年6月28日最終閲覧)

    他にも、「子どもの命と向き合うことで、母親父親になるために必要な準備ができた。」などの意見もありました。

    出生前診断を受けるかどうかはあなた次第

    出生前診断を受けることは「命の選別」「安易な中絶に繋がる」「障害者の生きる権利を冒涜している」などの問題があると批判する声もあります。

    現実に、出生前診断で陽性の結果を受け取った人たちの中絶率は9割というデータもあります。

    上手に使えば妊娠中安心して生活することもできますが、胎動が始まる時期に陽性の結果を受け取り、逆に混乱して不安な気持ちが大きくなってしまう妊婦さんもいます。

    また、検査を受ける時期によっては、妊娠中絶が可能な22週直前まで結果がわからない場合もあり、短い時間の中で決断を下さなければならない可能性があります。

    しかし、出生前診断に対する結論はそれぞれの家族の状況によって異なります。夫婦で話し合って自分たちで納得できる結論を出していただきたいと思います。

    検査を受けるかどうか決めるためには、ダウン症や出生前診断について十分に理解しておく必要があります。

    そのためにも、情報を集めましょう。実際に出生前診断を受けた方のブログなども参考になります。

    もし出生前診断やダウン症についてわからないことがあれば、臨床遺伝専門医の先生に相談し遺伝カウンセリングを受けることも有効です。

    産婦人科医 奥野幸彦 院長

    医師監修:産婦人科医 奥野幸彦 院長

    自己紹介

    産婦人科医としてこれまで多くの相談を受ける中で、妊婦の方々がご出産までの約10ヶ間様々な不安な気持ちを抱えていることを知りました。そんな不安が少しでも減るように日々の治療・検査を通して妊婦の方々に向き合っていきます。

    略歴

    • 1977年 大阪大学 医学部卒業
    • 1977年-1985年 大学病院・市民病院・救急病院などで勤務
    • 1986年 産婦人科・外科・内科を備える奥野病院を開院
    • 2000年 ジェンダークリニックを開院
    • 2017年 八重洲セムクリニックを開院

    保有資格等

    • 日本医師会 認定産業医
    • 国際出生前診断学会会員
    • 日本産婦人科学会 認定医
    • 母体保護法指定医