高齢出産のダウン症の発症率とは?リスクが高い妊婦さんにできること

妊娠中は、おなかの中の赤ちゃんが元気に育っているのか、無事健康に生まれてきてほしい、と赤ちゃんのことを考える時間が自然と増えていきます。

特に高齢妊娠の方は「ダウン症の発症リスクが高い」や「流産の可能性が高い」など、高リスクな出産になると耳にして心配している方も多いのではないでしょうか。

このコラムでは「ダウン症とはどんな症状があるのか」「高齢出産だとダウン症の可能性がどれくらい高まるのか」「リスクに対して準備ができること」などをご説明します。

ぜひ最後までご覧ください。

ダウン症とは

ダウン症(ダウン症候群)とは、通常2本1対で存在している21番染色体が、3本に増えてしまう「21トリソミー」と呼ばれる先天性疾患です。

中には、転座型と呼ばれる、お母さんかお父さんの染色体の形が由来するダウン症が5%程度発生する可能性もありますが、ほとんどが21トリソミーです。

年間、1000人に1人の割合でダウン症児が生まれると言われています。

ダウン症の症状について

ダウン症は心疾患(心臓に何らかの異常を持つ疾患)、口唇口蓋裂 (くちびるに裂け目が入ってしまう奇形)、耳、鼻、消化器などに合併症をもつことが多い傾向にあります。

運動能力、知能、言葉、社会性など、ゆっくりですが、日々少しずつ成長していきます。

重度の合併症が見られる場合も、比較的軽度で済む場合もあり、個人差があります。

漠然とサポートが大変そう、不安だ、といったイメージがあるかもしれませんが、実際には、ダウン症の子供たちは笑顔が可愛くとても元気いっぱいに育ちます。ダウン症は一種の個性として捉えるべきだと考えています。

また、ダウン症の方の約9割が幸せに感じると話しています。

寿命は平均60歳を超えており、他の染色体異常を持った方の寿命と比べ、長いことも特徴の1つです。

高齢出産の場合ダウン症の可能性が高まる

高齢出産になるとダウン症の可能性が高まると聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

実際、妊婦の分娩時年齢とダウン症の相関関係に関しては、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンなどの医学誌や、さまざまな機関が研究報告をあげています。

しかし、あくまで「年齢に応じてダウン症の発生割合が高まっていく」のであって、高齢出産時におけるダウン症の発症割合を見て、「可能性が高い」と感じる方も、「可能性が低い」と感じる方もいます。

ご自身が数字をどのように解釈するかが大切になります。

妊婦さんの年齢ごとのダウン症発生割合

LabCorp社によると、妊婦さんの年齢に応じたダウン症発症割合は以下のように推移します。

分娩時年齢 ダウン症候群
20歳 1/1177
25歳 1/1040
30歳 1/700
35歳 1/297
40歳 1/86
45歳 1/21

この表を見ると、分娩時20歳の方がダウン症児を出産する割合は1177人に1人ですが、45歳の場合、その割合は21人に1人となり、その差は約56倍です。

ダウン症の発症確率は、20代、30代、40代と、妊婦さんの分娩時の年齢が高くなるにつれて上昇しています。

そのため、第1子の時はダウン症などの障がいの可能性を指摘されなかったとしても、第2子、第3子の出産を出産する経産婦にダウン症の可能性が無いとは言い切れません。

また、日本では出産年齢が年々高まっているため、日本全体がダウン症のリスクが高まっていると言えます。

年齢によってダウン症の発症確率が高まる理由は卵子の老化

妊婦さんの分娩時の年齢に応じて、胎児がダウン症を患う可能性が高まる理由は、卵子の老化です。

女性の場合、胎児の時に一生分の卵子が作られます。そのため、卵巣の中に長時間卵子が貯蔵されることで、少しずつ卵子の染色体やDNAに影響が出てしまうのです。

卵子の老化が与える染色体異常は、受精卵の段階でもさまざまな影響を及ばします。

例えば、流産の危険性の増加や妊娠率の低下などの影響が考えられます。

日本産婦人科医会によると、臨床的に流産と診断された流産のうち、50~70%が染色体異常を原因とする流産だと言われています。

出典元:
 2.染色体異常 – 日本産婦人科医会
(2019年7月13日最終閲覧)

リスクが高まる妊婦さんができること

現在、さまざまな先天異常が発見されていますが、ダウン症は未だ、根本的な治療方法が確立されておらず、ご両親や周りのサポートが必要な状態です。

そのため、生まれる前からリスクに備えて、できる準備はしておきたいと考える方もいらっしゃると思います。

この章では大きく分けて、2つの準備の方法をご紹介します。

①出産前に出生前診断を受けて事前にダウン症児を迎える準備をする

出生前診断(出生前検査、出生前遺伝学的検査)とは生まれてくる前に赤ちゃんの染色体異常の有無や可能性を判定する検査です。

最近では芸能人の方も出生前診断を受けているとニュースで報道されていることもあり、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

染色体異常は、障害や病気の原因になります。出生前診断は、大きく分けて2種類の検査があります。

出生前診断は様々な種類がある

1種類目は、精度が高く、染色体異常の「有無」を確定させることができるが、代わりに胎児や母体にリスクのある「確定診断」です。

例えば、お腹に針を刺し、胎児細胞が含まれている羊水を採取し染色体検査を行う、羊水検査などが挙げられます。

2種類目は、精度が低く染色体異常の「可能性」までしか検査できないが、代わりにリスクがほとんどない「非確定診断」です。

例えば、母体の血液を採血し、胎児由来のDNAを用いて染色体検査を行うNIPT(新型出生前診断)などが挙げられます。

検査の方法によって、精度や、検査実施時期、費用が数万円〜約20万円と高額なものからリーズナブルな検査があったりと、さまざまです。

ご自身が必要だと思う検査を選択してください。

出生前診断については以前、コラムでご紹介していますので、そちらも合わせてご覧ください。

出生前診断の種類や検査内容とは?わかりやすく解説!
出生前診断のメリットとデメリット|あなたは出生前診断を受ける?

出生前診断を受ける理由

出生前診断を検討されるようになったきっかけは人によって違います。

「妊娠中に超音波(エコー)検査を受け、染色体異常の可能性を指摘され、不安な気持ちになったから」「不妊治療の末に授かった子どもだから、万全の準備をして迎えたい」などの理由が挙げられます。

もし、ダウン症であると妊娠中に知っていれば、NICU(新生児集中治療管理室)の設置があるなど、体制の整った病院に移っておき、もしもの時にすぐ対応できる環境で分娩に臨むこともできます。

出生前診断における問題点

しかし、出生前診断は、受け方によってマイナスに働いてしまう可能性もあり、賛否両論です。

例えば、「安易な中絶の助長である」「障害を持つ方の生きる権利を侵害する」「命の選別」などの批判の声があります。

実際に、検査結果が陽性の場合、中絶を選択する妊婦さんは約9割とも言われています。

さらに、中絶を選択することで精神的負担が大きく、うつ状態に陥ってしまうケースもあります。

また、後天的な疾患もありますので全ての疾患が検査できる訳ではありません。

そのため、日本産科婦人科学会(日本産婦人科学会)は一部の出生前診断において、検査実施施設や、対象妊婦を規制し、妊婦さんが決断をするにあたり十分な情報を得られる状態を維持しようとしています。

②ダウン症やサポートについて理解を深めておく

ダウン症児が生まれた際、ダウン症の症状の理解と、その生活について理解しておく必要があります。

ダウン症は合併症を伴うことが多いので、生まれたらすぐ小児科医が全身の検査をし、その後も定期検診が必要になります。

また、理学療法士や言語聴覚士などによる、療育を行うことで能力を引き出すことができます。

しかし、療育は「療育センター」と呼ばれる病院とは別の施設で行われており、空席が出るまでしばしば待つこともあります。

他にも、様々な福祉制度がありますが、他の人が教えてくれる場面は少ないので、ご自身で理解を深めておく必要があります。

ダウン症候群については以下の方法がおすすめなので確認してみてください。

オススメの方法①日本ダウン症協会の相談窓口を利用する

公益財団法人 日本ダウン症協会

日本ダウン症協会とは、ダウン症のある人たちとその家族、支援者からなる会員組織です。

特に、ダウン症児を育てた豊富な経験と知識をもつ、ベテラン相談員さんに、電話で相談に乗ってもらうことができるのが特徴です。

また、全国各地にその地域のダウン症サポート事情に詳しい相談員さんが在籍していたり、乳幼児の発達相談も行なっています。

お一人で悩みを抱え込んでしまうよりも、誰かに相談できることで安心する方もいます。前に進むため、準備を進めるためにも一度相談してみてはいかがでしょうか。

*相談時間/月曜日から金曜日の10:00~15:00
  TEL: 03-6907-1824
出典元:
公益財団法人 日本ダウン症協会
(2019年7月18日最終閲覧)

オススメの方法②ダウン症児を育てる親のブログをみる

ダウン症児を育てるママさんやパパさんたちは、ブログで子どもの成長記録を残している方も多いです。

インターネットや病院の先生からの情報では「ダウン症には合併症がある」ことはわかりますが、「合併症の治療過程」や「ダウン症児の日常生活」について詳しく知ることは難しい場合もあります。

対して、ブログの良い点は、子どもがどのように成長していくのか、また子育てを通じて、ご両親がどのように感じたかなど、よりリアルなダウン症児の生活を知ることができる点です。

さまざまなブログがありますので、閲読してみるのも良いと思います。

オススメの方法③遺伝カウンセリングを受ける

「全国臨床遺伝専門医・指導医・指導責任医一覧」

遺伝カウンセリングとは、臨床遺伝専門医と呼ばれる、臨床遺伝学の研修を3年以上行い、遺伝カウンセリングの経験を積んだ専門医によるカウンセリングのことです。

遺伝カウンセリングの目的は、医学的な知識をわかりやすくお伝えし、自らの力で医療技術や医学情報を利用して問題を解決していけるよう、心理的なサポートを含めた支援を行うことにあります。

豊富な知識をもち、たくさんの方の相談に乗ってきたカウンセラーさんだからこそ、合併症の治療についてや、予後について話ができます。

高齢出産の方はできるだけ準備をして万全の体制で出産を迎えましょう

高齢になればなるほどダウン症の発症確率は高まっていきます。

しかし、その数字をいかに解釈するかがとても大切です。

どうしても不安であれば、出生前診断を受けたり、事前にダウン症について調べたりと、準備できることもあります。

子どもを迎える準備を通して、母親、父親の自覚が芽生え、精神的にも楽な気持ちになったと話す方もいます。

一度、夫婦でじっくり話し合う時間を設けてみるのもいいかもしれません。

産婦人科医 奥野幸彦 院長

医師監修:産婦人科医 奥野幸彦 院長

自己紹介

産婦人科医としてこれまで多くの相談を受ける中で、妊婦の方々がご出産までの約10ヶ間様々な不安な気持ちを抱えていることを知りました。そんな不安が少しでも減るように日々の治療・検査を通して妊婦の方々に向き合っていきます。

略歴

  • 1977年 大阪大学 医学部卒業
  • 1977年-1985年 大学病院・市民病院・救急病院などで勤務
  • 1986年 産婦人科・外科・内科を備える奥野病院を開院
  • 2000年 ジェンダークリニックを開院
  • 2017年 八重洲セムクリニックを開院

保有資格等

  • 日本医師会 認定産業医
  • 国際出生前診断学会会員
  • 日本産婦人科学会 認定医
  • 母体保護法指定医