新型出生前診断を受ける条件とは?新指針の妊婦さんへの影響は?

新型出生前診断は、2013年に臨床研究として導入された新しい検査です。

導入されてからたった5年で、全出生前診断(出生前検査)の実施件数の約25%を占めるほど、急激に増加しています。

しかし、検査を受けるにはいくつかの条件が設けられていることはご存知ですか?

日本産科婦人科学会(日産婦)が設置した指針の元で検査を行なっており、その指針には一定の条件が課されています。

赤ちゃんが病気や障害がないか調べるためNIPTを検討していたのに、条件が合わないという理由で検査を受けられないという事態は避けたいですよね。

今回のコラムでは、新型出生前診断の条件についてご紹介します。

ぜひ、最後までご覧ください。

新型出生前診断とは

新型出生前診断は、染色体異常が原因の病気や障害を確認する、出生前診断(出生前検査、出生前遺伝学的検査)の一種です。

母体の血液中には母体由来のDNAだけでなく、胎児由来のDNA断片も含まれています。

新型出生前診断は、母体血を採血し、「次世代シークエンサー」という機械で血液中のDNAを解析することで、染色体異常の可能性を検出します。

検査項目は以下の3点です。

  • 21トリソミー(21番染色体が3本存在する染色体疾患で、別名ダウン症候群。)
  • 18トリソミー(18番染色体が3本存在する染色体疾患で、別名エドワーズ症候群)
  • 13トリソミー(13番染色体が3本存在する染色体疾患で、パトー症候群)

検査費用は約20万円です。保険適用がないため、自費で検査を行います。

検査の際にリスクがほとんどない

採血のみで検査ができるため、リスクがほとんどありません。

従来の羊水検査や絨毛検査では、検査精度を保つために、胎児細胞が含まれている羊水や絨毛を採取します。

その際、お腹に針を刺して成分を採取する必要があるため、流産や破水、出血などのリスクを伴う侵襲的な検査です。

検査精度が高い

胎児由来のDNAを利用して検査ができるため、検査結果の精度が99.9%と非常に高いです。

また、検査結果は「陰性」または「陽性」で表示されます。

そのため、新型出生前診断で「陰性」の結果を受けとった場合、羊水検査を回避できます。

従来の母体血清マーカー検査などは「確率」で検査結果が表示されていたことを考えると、この点は新型出生前診断のメリットと言えるでしょう。

しかし、NIPTの検査にも注意すべき点はあります。

「陽性」の結果を受け取った妊婦さん100人のうち、約2〜3人は実際に異常がない「偽陽性」があると言われています。

そのため、「陽性」の結果を受け取った場合は、リスクを伴う羊水検査を受ける必要があります。

日本産科婦人科学会が定める新型出生前診断を受ける条件

冒頭でも説明した通り、新型出生前診断は日本産科婦人科学会が定める指針によって運用されており、検査を受けるには一定の条件があります。

検査を受ける条件は大きく分けて「実施施設の限定」「対象妊婦の限定」「遺伝カウンセリングの受診」の3つになります。詳しくご説明します。

実施施設の限定

日産婦は一定の基準を満たした「認定施設」で検査を実施しています。

認定施設に必須の条件は、最低でも以下の4点を満たす必要があります。

  • 産婦人科医師(産婦人科専門医)、小児科医師(小児科専門医)の常駐していること
  • どちらかが臨床遺伝専門医または周産期専門医であること
  • 遺伝外来を設けていること
  • 絨毛検査や、羊水検査の実施が可能なこと

2018年3月31日までに、全国で認可を受けているのは90箇所の施設しかありません。

そのため、大学病院など一部の施設しか、認可施設でと認められず、検査を提供したくてもできない産婦人科施設もあります。

対象の妊婦の限定

対象になる妊婦さんは以下の条件があります。

1. 胎児超音波検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された者。
2. 母体血清マーカー検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された者。
3. 染色体数的異常を有する児を妊娠した既往のある者。
4. 高齢妊娠の者。
5. 両親のいずれかが均衡型ロパートソン転座を有していて、胎児が 13トリソミーまたは 21トリソミーとなる可能性が示唆される者。
出典元:
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針
(2019年7月26日最終閲覧)

ここでいう、高齢妊娠の者とは、35歳以上の妊婦さんを指します。つまり、年齢制限があるということです。

35歳以上になると、他の年代の妊婦さんと比べて、染色体異常の可能性が高いと言われています。

指針では客観的にみて、染色体異常の可能性が高い妊婦さんに限定しています。

遺伝カウンセリングを最低2回

遺伝カウンセリングとは、妊婦さんが自ら意思決定を行うために実施されます。

カウンセリングでは、医学的な知識を共有したり、混乱している考えをまとめるために話を聞いてもらえたりします。

担当してくれる遺伝カウンセラーや、臨床遺伝専門医は、一定の価値観を押し付けたりせず、妊婦さんの考え方を尊重します。

指針では、採血を行う前後に遺伝カウンセリングを受診する必要があり、また病院によっては夫婦揃って受診しなければならないという規定を設けています。

そのため、最低でも夫婦揃って2回〜3回は病院に通う必要があります。

指針を設置した背景

日本産科婦人科学会によると、指針を設置した際に以下のことに考慮しています。

その簡便さを理由に母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査が広く普及すると、染色体数的異常胎児の出生の排除、さらには染色体数的異常を有する者の生命の否定へとつながりかねない。
出典元:
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針
(2019年7月26日最終閲覧)

確かに、新型出生前診断における「命の選別」「安易な中絶につながる」などの批判は、出生前診断を語る上で外せないテーマです。

現状、染色体異常を根本から治す治療法は確立されていません。合併症の治療などを抑える支持療法が基本です。

そして、染色体異常が見つかった場合、妊婦さんの約9割が人工妊娠中絶を選んでいるというデータもあります。

一方で、事前に染色体異常について知っておくことで、NICUのある大きな病院で分娩したり、染色体異常について少しずつ理解を深めたりすることで、精神的にも準備を行うことができるという声も上がっています。

一概に、出生前診断を排除すべきなどと結論つけることはできません。そのため、現在は希望者のみが検査を受けると言う形で落ち着いています。

日本産科婦人科学会が規制緩和を発表

近年、NIPTの実施施設数不足や、地域的偏在などの理由で、無認可施設が増えています。

それによって、十分なカウンセリングを受けない、または適切なケアを受けることができない妊婦さんが増えてしまい、かえって妊婦さんの混乱を招いてしまう可能性があると、日産婦は考えています。

そのため、日産婦は検査施設の規制を緩和し、検査を実施する施設を増やしていく方針です。

新しい新型出生前診断の指針の内容

新しい指針では、新しく「連携施設」を設け、検査を実施できる施設を増やします。

連携施設の認定条件は、産婦人科専門医で、かつ臨床遺伝専門医の資格を有している、または臨床遺伝学についての研修が修了している医師が常勤しており、小児科専門医と常時連携できることです。

従来の認定施設との大きな差は小児科医が常勤しているかどうかです。

しかし、もし、結果が陽性の場合は従来の認定施設の条件を満たしている「基幹施設」でのカウンセリングが必要になります。

そのため、小児科専門医が常勤する、基幹施設と連携施設との深い関わりが重要になります。

厚生労働省が検討会を設置し、規制緩和を設けた新指針の運用を「保留に」

指針は発表されたものの、厚生労働省が運用を保留にしました。

今まで、日産婦や日本人類遺伝学会など、関係する学会による議論の元で、出生前診断は運用されていました。 しかし今回の指針に関しては、実に20年ぶりに国が動き始める事態となりました。

その理由について、厚生労働大臣は以下のように話しています。

これまで関係学会等の議論を注視してきましたが、関係学会の意見が分かれることになれば、妊婦等への不安が広がりかねないことから、厚生労働省として本年秋頃に検討の場を設け、NIPT検査について必要な議論をしていくこととしたものであります。
そのため、検討会での議論を踏まえた対応をお願いし、その結果、産科婦人科学会はひとまず指針の運用開始を保留にすると発表しています。
出典元:
根本大臣会見概要 |大臣記者会見|厚生労働省
(2019年7月26日最終閲覧)

では、厚生労働大臣が指す「関係学会の意見」とは一体どのようなものなのでしょうか?この章では特に、新指針に対して、反対している学会の意見をご説明します。

日本人類遺伝学会の反対

日本人類遺伝学会とは、人類遺伝学についての学会です。

新型出生前診断に関しては、受診する際に必須の遺伝カウンセラーの認定という点で関わっています。

日本人類遺伝学会は居住地域などの条件に差があることや、妊婦さんの要望が多いからという理由では、認定施設の基準を下げるべきではないと話しています。

その理由は主に以下の4点です。

・連携施設は、臨床遺伝専門医、小児科医、認定遺伝カウンセラーなどの多領域・多職種の関与がなくとも実施可能となり得る点
・臨床遺伝専門医、小児科医による説明、支援が失われる可能性がある点
・いわゆる非認可施設での実施に対する対策が不十分な点
・格差に対する対策が不十分と思われる点
出典元:
母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する新指針(案)に関する日本人類遺伝学会の意見表明
(2019年7月26日最終閲覧)

特に印象的なのは、陽性の場合、連携施設から基幹施設に紹介するという体制についての指摘です。

連携施設から、基幹施設に転院するということは、結果を受け取ってからカウンセリングを受けるまでに時間が空いてしまうということです。

その間、今まで経験したことのない強い不安と対峙し続けることで、妊婦さんが不適切な判断に基づく中絶を行なってしまうのではないかと指摘しています。

日本小児科学会の反対

日本小児科学会は、小児医療の向上のために研鑽を積んでいる小児科医を中心とした学術団体です。

新型出生前診断に関しては、認定施設や基幹施設に必要な、小児科専門医の認定を行うという点で関わっています。

日本小児科学会は、以下の2点に関して指摘しています。

1)NIPT実施において、多職種、多領域の連携による継続的な支援体制が損なわれかねないこと 2)NIPT実施の前後を含む妊娠・出産・誕生・母子の健康と医療というプロセスに対して小児科医による必要なサポートの機会が失われてしまうこと 出典元:
母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)新指針(案)に関する日本小児科学会の基本姿勢|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY
(2019年7月26日最終閲覧)

多職種、多領域の連携による支援が必要である、という点は、日本人類遺伝学会と同じ指摘です。

特に、小児科医が関与しないことで、染色体の病気をもつ方とともに生きる社会の実現から遠ざかるという点に関して、強く指摘しています。

新型出生前診断を希望する妊婦さん、家族の意思は尊重されるものである。と前置きした上で、染色体の病気の子どもとご家族の実情を知っていただき考える機会をもつべきであると指摘します。

そして、小児科医の関与が不十分であると、上記のような機会が失われてしまうと懸念しています。

NIPTを取り巻く環境が変わっても指針は古いまま

新型出生前診断が導入されてから、5年以上経過し、この検査を取り巻く状況も大きく変わりました。

しかし、その指針は未だに古いままです。

妊婦さんが安心して妊娠期間を過ごせるように、今後新型出生前診断の仕組みが整備されていくことを望みます。

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