全染色体の検査が可能となった新型出生前診断について

日本では2013年4月より検査が開始された新型出生前診断、従来の出生前診断と比べて精度や感度が大幅に向上したことで話題となりましたが、2016年にはついに新型出生前診断で胎児の全染色体の検査が可能となりました。

全染色体の検査が可能になった新型出生前診断とは?

「新型出生前診断」は2011年にアメリカで開始された新しい出生前診断のことで、母体から血液を採取し、その血液に含まれる遺伝子を解析することで胎児の染色体異常の有無を調べることができるスクリーニング検査です。

「NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)」、「母体血細胞フリー胎児遺伝子検査」、「母体血胎児染色体検査」などいくつかの呼称があり、従来行われてきた出生前診断よりもその精度や感度がきわめて高いことから「新型」と名づけられています。

日本で提供されてきた母体血清マーカーテストの感度や特異度が80~86%程度であったのに対し、アメリカのシーケノム社が開発した検査手法「MaterniT21 plus」では、トリソミー21において感度や特異度は実に99%という高精度を実現しています。

なお、新型出生前診断で検査の対象となっているのは染色体の数的異常で、

・13トリソミー(パトー症候群)
・18トリソミー(エドワーズ症候群)
・21トリソミー(ダウン症候群)

の3種類になります。

新型出生前診断では、母体に針を刺したり、子宮頸部にカテーテルを挿入したりする母体血清マーカーテストや羊水検査、絨毛検査などの出生前診断と比べて、わずか20cc程度の血液を採取するだけで検査が可能です。

母体や胎児へのリスクがはるかに低いうえに高い精度を誇ることもあって、新型出生前診断は年々受検者が増えており、検査開始から3年間ですでに3万人を超える妊婦さんが受検しています。

なかでも高齢出産を控えた妊婦さんが胎児に異常がないかを気にかけて受検するケースが多いと言われています。

また2016年には、前出のシーケノム社が新たに開発した検査手法「Materni-quenom(マタニティ・ゲノム)」によって、新型出生前診断にて胎児の全染色体の検査が可能となり、従来の出生前診断では診断できなかった異常まで検査することができるようになりました。

新型出生前診断にもデメリットがある

従来の出生前診断と比較するときわめて精度の高い安全な検査手法と言えますが、いくつかのデメリットもありますので覚えておきましょう。

費用が高額になりがち

新型出生前診断は保険適用外となりますのでかかる費用は私費(自己負担)となり、費用も検査を受ける医療機関によって異なります。一般的に、検査代金と診察費などを合わせると高額になる医療機関が多いとされています。

検査可能な病院が少ない

新型出生前検査は臨床研究という位置付けのため検査を行うには、日本医学会の認可が必要で、日本ではまだまだ検査可能な病院が少ないのが現実です。受けたい妊婦さんに対しての供給が間に合っていない状態です。

予約~検査結果まで時間を要する

検査可能な病院が少ないことに加えて、新型出生前診断は解析を専門に請け負っているセンターに採取した血液を送るという、いわゆる“外注検査”となります。

また、実際に採血するまでに数回の診察が必要なことなどもあり、非常に混雑しているのが現状です。数週間から数ヶ月待ちという方も珍しくなく、さらに検査結果も数週間程度を要するという状況になっています。

このほかにも、検査を受ける病院や施設によって多少の違いはあるものの

・妊娠10~18週の期間内であること
・出産予定日時点で35歳以上の妊婦であること
・妊婦または配偶者に染色体異常が見られること
・過去に染色体異常の胎児を妊娠/出産したことがあること
・検査を受ける病院で分娩予定であること

などの条件に当てはまらなければ検査を受けることができないケースもあり、誰もが望み通りに受けることができる診断というわけではありません。

また、新型出生前診断を行った結果は「陽性」「陰性」で示されるため解釈するのに特別な知識や時間は要しませんが、なかには偽陽性(本当は陰性なのに検査では陽性と診断されてしまうこと)の可能性があるケースもあり、その場合は羊水検査などの確定診断を行うことになります。

新型出生前検査を受ける前に

新型出生前検査では13トリソミー、18トリソミー、21トリソミーなどの染色体異常が分かる確率が高く、また新型出生前検査の中には全染色体についての検査が可能なものもありますので、検査を希望する妊婦さんは年々増加しています。

しかし、前述したように検査を受けるためには様々な条件があったり、高額な費用が必要になったり、また予約から実際に検査を受けるまでに長時間を要したりなど課題も抱えています。

現状を把握しておく必要があることと併せて、もし検査の結果胎児に何らかの異常が見つかった場合の心構えや育て方などについて配偶者や家族間でしっかり考えを共有しておくことも大切です。

新型出生前診断を受ける前には「遺伝カウンセリングを受ける」ことや「医師や配偶者とよく相談する」ことが良いといえるでしょう。

また、八重洲セムクリニックと奥野病院では今回ご紹介した新型出生前診断などの持つデメリットを解消した“Serenity basic”という最新の出生前検査を採用しています。興味のある方はぜひお問い合わせてみてはいかがでしょうか。

産婦人科医 奥野幸彦 院長

医師監修:産婦人科医 奥野幸彦 院長

自己紹介

産婦人科医としてこれまで多くの相談を受ける中で、妊婦の方々がご出産までの約10ヶ間様々な不安な気持ちを抱えていることを知りました。そんな不安が少しでも減るように日々の治療・検査を通して妊婦の方々に向き合っていきます。

略歴

  • 1977年 大阪大学 医学部卒業
  • 1977年-1985年 大学病院・市民病院・救急病院などで勤務
  • 1986年 産婦人科・外科・内科を備える奥野病院を開院
  • 2000年 ジェンダークリニックを開院
  • 2017年 八重洲セムクリニックを開院

保有資格等

  • 日本医師会 認定産業医
  • 国際出生前診断学会会員
  • 日本産婦人科学会 認定医
  • 母体保護法指定医