NIPTの精度や的中率は高いの?検査精度について徹底解明!

妊娠中は、赤ちゃんに病気や障害がないか、無事に生まれてきてくれるのか心配になることもあると思います。

そのように考える妊婦さんの中で、注目されているのが新しい出生前診断の「NIPT」です。

2013年、臨床研究としてNIPTを導入してから、出生前診断全体の件数も急激に増加しており、妊婦さんの認識にも変化が起きています。

NIPTが注目されている理由の1つに、「NIPTの精度」があります。

このコラムでは「NIPTの検査概要」「NIPTの検査精度」など、検査精度について具体的にご説明します。

ぜひ最後までご覧ください。

NIPT(non invasive prenatal testing、新型出生前診断)とは

NIPTは2011年に米国が開発した、新しい出生前診断(出生前検査、出生前遺伝学的検査)です。

母体血を用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査、新型出生前診断などさまざまな呼び名があります。

母体血の血漿中には、胎盤由来のcell-freeDNA断片が含まれています。NIPTでは次世代シークエンサーと呼ばれる機械を使い、塩基配列を解析し、染色体異常の可能性を検出します。

NIPTの受検を検討される理由は、以下のようなものがあります。

  • 「妊婦健診での超音波検査でNTと呼ばれる首の後ろのむくみを指摘されて」
  • 「安心して出産を迎えたい」
  • 「高齢出産なので、染色体異常が気になる」

今までも出生前診断を受けたいと考えている妊婦さんはいらっしゃいましたが、検査のリスクや精度を考慮し、検査を受けることを断念している方もいました。

NIPTの精度に関しては後ほどご説明します。

検査対象の疾患

検査の対象疾患は主に以下の3つです。

  • 21トリソミー(ダウン症候群:21番染色体が3本存在する染色体異常)
  • 18トリソミー(エドワーズ症候群:18番染色体が3本存在する染色体異常)
  • 13トリソミー(パトー症候群:13番染色体が3本存在する染色体異常)

通常、染色体は両親の遺伝子情報が半分ずつ含まれており、2本1対で存在しています。

しかし、卵子の老化などが原因で、染色体に数的異常が起きてしまうことがあります。

染色体異常は、流産の可能性や合併症を発症する障害をもたらす可能性があります。

現状、染色体異常を根本から治す治療法はありません。また、頻度の高い合併症などはそれぞれどの染色体に染色体異常が発生するかによって異なります。

NIPTを受け、事前に染色体異常があることを知っておけば、NICU(新生児集中治療室)が完備された大学病院で分娩したりと、様々な準備をしておくこともできます。

NIPTの特徴

出生前診断にはさまざまな検査方法がありますが、NIPTはその中でも一線を画している検査です。

検査精度以外にも「妊娠初期の10週目から検査ができること」「リスクがほとんどないこと」の2つの特徴があります。

特徴①妊娠初期の10週目から検査ができる

他の検査に比べ、検査実施時期が早いです。

日本ではいかなる理由があっても、人工妊娠中絶を22週目以降に実施することができません。

そのため、早く検査を受け、話し合いの時間を設けることで、夫婦の精神的な負担を小さくすることができます。

従来の出生前診断の検査時期はそれぞれ、母体血清マーカー検査が15週〜18週、絨毛検査が11週〜14週、羊水検査が15週〜16週以降、コンバインド検査が11週〜13週でした。

特徴②リスクがほとんどない検査

NIPTは精度が高い検査にも関わらず、採血のみで検査ができるためほぼリスクがない検査です。

従来の検査では、お腹に針を刺し、胎児細胞の含まれた絨毛や羊水を採取する必要があったため、流産や破水などのリスクがある侵襲的検査でした。

NIPTの精度について

NIPTの検査精度は非常に高く、約99.9%(検査会社によって多少の変動有)です。

感度(実際に染色体異常がある人を正しく陽性と判断する精度)が他の検査に比べて高く、特に特異度(実際に染色体異常のない人を正しく陰性と表示する精度)は約99.9%と非常に高い検査です。

この章では、NIPTの精度の特徴についてご説明します。

陰性的中率が高いため、陰性の結果の場合は侵襲的な検査を回避できる

陰性的中率とは、陰性と判断された人のうち、実際に染色体異常がない人の割合です。

そのため、陰性と結果が出たのに結果が異なる(偽陰性)可能性はほとんど無く、スクリーニング検査として利用されています。

従来であれば、血液中の4種類の成分を分析する精度の低い母体血清マーカー検査(クアトロテストテスト)を受けるしかありませんでした。

母体血清マーカー検査の結果は確率で表示されるため、どのように解釈するかによっては、侵襲的な検査を受ける必要がありました。

検査結果が陽性でも実際には胎児に異常がない「偽陽性」の可能性もある

陽性的中率とは、陽性と判断された方のうち、実際に染色体異常がある人の割合です。

NIPTの陽性的中率は、97.6%です。つまり、100人に2人〜3人はNIPTでは陽性でも、羊水検査では陰性と診断されます。(偽陽性)

「出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来(河合蘭著)」によると、母体血清マーカー検査での陽性的中率は9.67%と非常に低いものでした。

年齢が高いほど陽性的中率が高くなる

NIPTの陽性的中率は、年齢によって変動があります。

25歳の方の場合は、21トリソミーのリスクが低いため、陽性反応が出た方の90%程度が実際に陽性と考えられます。

一方で、35歳の方の場合は、21トリソミーのリスクが20代と比較して高くなるため、陽性反応が出た方の97.6%の方が実際に陽性と考えられます。

他にも、検査結果が上手に判定できない、染色体モザイクなど検査の限界もあります。

日本産科婦人科学会の指針

NIPTは2013年、日本産科婦人科学会が指針を発表し、臨床研究として運用が開始されました。

現在は臨床研究が終了し、2018年3月に一般診療化しております。ただし、新しい指針に関しては問題点が多く、2019年6月に厚生労働省が検討会を設置しました。

この章では、現状の指針についてご説明します。

NIPTの実施施設を限定している

指針内では、条件を満たし、妊婦さんに十分な情報を提供できる体制が整っていると判断された「認定施設」に検査を行う施設を限定しています。

認定施設の条件は、小児科専門医と産婦人科の両方が常勤していること、小児科専門医または、産婦人科専門医のどちらかが臨床遺伝専門医の資格を有していること、遺伝外来を設置していることなどが挙げられます。

そのため、かかりつけの産婦人科ではNIPTを受けることができず、紹介状が必要な場合や、そもそも予約が難しい場合があります。

最低でも3回夫婦で来院する必要がある

NIPTの検査を受けるためには、検査以外に、遺伝カウンセリングを最低2回受ける必要があります。

遺伝カウンセリングとは、遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医の資格を有する医師が、妊婦さんに遺伝的な知識をお伝えしたり、意思決定ができるようにサポートするカウンセリングです。

資格を取得できるのは、3年以上の研修を終えた産婦人科医や小児科医、看護師や助産師などです。

遺伝カウンセリング自体はとても有益なものですが、夫婦揃って、最低でも3回来院することが難しい方もいます。

35歳以上の妊婦をはじめとした染色体異常の可能性が高い人のみ

指針では、検査の対象となる妊婦さんを染色体異常の可能性が高いと客観的に判断できる方のみ制限しています。

対象妊婦の項目は以下の通りです。

母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査を受けることを希望する妊婦のうち、次の 1~5のいずれかに該当する者とする。
1. 胎児超音波検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された者。
2. 母体血清マーカー検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された者。
3. 染色体数的異常を有する児を妊娠した既往のある者。
4. 高齢妊娠の者。
5. 両親のいずれかが均衡型ロパートソン転座を有していて、胎児が 13トリソミーま たは 21トリソミーとなる可能性が示唆される者。
出典元:
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針
(2019年7月19日最終閲覧)

つまり、染色体異常の可能性が高いと客観的に示すことができない、34歳以下の妊婦さんは、どんなにNIPTを受けたいと思っても認定施設で検査を受けることはできません。

検査項目の制限

NIPTの検査項目は、コラム前半でご紹介した、3つのトリソミーのみに限定しています。

本来であれば、3つのトリソミー以外にも、1〜22番染色体や性染色体を含む全染色体の数的異常や、構造的異常(微小欠失症候群など)も検査可能です。

そのため、NIPTでは性別も判断することができます。

もし、検査項目を増やしたい場合は、羊水検査や絨毛検査などの胎児細胞を利用する検査、または無認可施設で検査を受ける必要があります。

NIPTの検査や精度についてよくある3つの質問

指針によると「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査について医師が妊婦に積極的に知らせる必要はない。」と明文化されているため、未だNIPTの検査や精度の情報は十分に出回っていません。

そのため、検査を受けるにあたって不安なことがある方もいらっしゃると思います。

この章では、NIPTの検査や精度についてよくある3つの質問にお答えします。

①子どもが双子です。検査の精度に影響はありませんか?

検査精度に大きな影響はありませんが、検査項目は3つのトリソミーに限られます。

通常であれば検査が可能な、全染色体や微小欠失症候群などの検査ができません。

②無認可施設って危険なイメージがあるのですが、検査精度に問題はありませんか?

結論から申し上げますと、検査精度に問題はありません。むしろ、出生前診断が普及している海外の検査会社を利用しているため、無認可施設の方が検査精度が高い場合もあります。

また、NIPTは法律の範囲内での医療行為であるため、危険ではありません。しかし、中には、美容整形クリニックなど専門外の医師が検査をしている医療機関も存在します。

無認可施設で検査を受けられる場合は、産婦人科医が検査を担当しているか、遺伝カウンセリングがあるか、陽性の場合のサポートの手厚さなどを考慮して、施設を探しましょう。

③性別も検査できると聞いたのですが、性別の検査精度はどの程度正確ですか?

前述の通り、技術上、性別を検査することは可能です。

性別の検査精度は99%です。

従来の出生前診断では羊水検査、絨毛検査、超音波検査などを用いることで性別を判断することができますが、性別を告知してくれるかどうかは医師の意向によって異なります。

NIPTの精度は従来の非確定診断と比べて高いが確定診断ではない

NIPTは偽陽性もあるため、確定診断ではありませんが、従来の非確定診断と比べると高精度で、リスクがほとんどありません。

一方で、出生前診断の技術の進歩には目を見張るものがありますが、「安易な中絶を助長する」「命の選択に繋がる」といった倫理的問題があるという考え方もあります。

とはいえ、子どもを育てるのは夫婦お二人です。

NIPTの意義や染色体異常について十分に理解した上で、納得した決断をすることが重要です。 

もし、出生前診断についてわからないことや不安なことがあり、決断が難しい場合は、産婦人科の医師に相談してください。

産婦人科医 奥野幸彦 院長

医師監修:産婦人科医 奥野幸彦 院長

自己紹介

産婦人科医としてこれまで多くの相談を受ける中で、妊婦の方々がご出産までの約10ヶ間様々な不安な気持ちを抱えていることを知りました。そんな不安が少しでも減るように日々の治療・検査を通して妊婦の方々に向き合っていきます。

略歴

  • 1977年 大阪大学 医学部卒業
  • 1977年-1985年 大学病院・市民病院・救急病院などで勤務
  • 1986年 産婦人科・外科・内科を備える奥野病院を開院
  • 2000年 ジェンダークリニックを開院
  • 2017年 八重洲セムクリニックを開院

保有資格等

  • 日本医師会 認定産業医
  • 国際出生前診断学会会員
  • 日本産婦人科学会 認定医
  • 母体保護法指定医