出生前診断を受ける割合は?受ける人が増える理由や問題点

出生前診断とは胎児に先天的な病気がないか確認する検査です。

出生前診断にはそれだけでは診断が確定できない非確定検査(NIPTやクアトロテストなど)やその結果だけで診断が確定できる確定検査(羊水検査など)があります。最近では出生前診断を受ける割合は高まり、35歳以上で34.7%、40歳以上では59.1%の割合になっています。

しかし実際に出生前診断を受ける妊婦さんは増えているものの、

「出生前診断は何となく知っているけど、どんな人が受けているの?」
「どのくらいの人が受けているの?受けている理由は何?」

など疑問や不安もある人も多いと思います。

今回は検査を受ける人が増えている背景と割合を解説するとともに、出生前診断を受ける人が増えている理由や問題点などを説明します。

出生前診断を受ける割合は年々増加傾向

出生前診断受検件数と受ける割合は年々増加傾向にあります。

2006年では出生数1,092,674のうち約2.9万件の出生前診断が実施されたため、2.6%以下の妊婦さんしか検査を受けていない計算になります。2016年の調査では出生数が976,978のうち約7万件の出生前診断が実施されたため、約7.16%の妊婦さんが出生前診断を受けたとされています。

2020年に行われた調査では、何らかの出生前診断を受けた方の割合は、35歳未満17.1%、35~39歳34.7%、40歳以上では59.1%となっています。出生前診断実施の割合は15年で年々増加しており、出生数が下がっているのに対して出生前診断を受ける割合は高まっていることがわかります。

出所:厚生労働省 NIPT等の出生前検査に関する専門委員会「女性から見た出生前検査(2020)」を基に作成

出生前診断を受ける割合が増えている要因

出生前診断の検査件数と検査を受ける割合が増加している要因を2点挙げます。

要因①高齢妊婦の増加

日本では女性の出産平均年齢の高齢化が進んでおり、厚生労働省の調査によると2000年の第1子出産時の平均年齢は28.0歳でしたが2015年以降は30.7歳と、出産平均年齢は高止まりしています。

出所:厚生労働省「出生に関する統計(令和3年度)」を基に作成。」を基に作成

対してダウン症などの染色体異常を持つ胎児の妊娠は妊婦さんの年齢が高くなるほど起きやすくなると言われています。

世界最大の臨床検査ネットワークの 1 つを運営するLabCorpによると、20代(25歳の妊婦)の場合、1/1040の確率でダウン症候群が発生するのに対し、40代(40歳の妊婦)の場合は1/86の確率と差は歴然です。

とりわけ高齢出産と呼ばれる30代後半(35歳の妊婦)を目処に発生率が上昇することがわかっています。さらに、そのため日本全体として染色体異常の発生率が上がっていると言われており、今後も診断件数は増えていく見込みとなっています。

出産年齢とダウンの確率について詳しくは「高齢出産とダウン症確率の関係」をご確認ください。

要因②出生前診断の認知の広がり

出生前診断の広がりの背景にはNIPT(新型出生前診断)が導入された背景があります。NIPTは2013年に日本国内に導入された新しい検査です。

当時主流だった母体血清マーカー検査(クアトロ検査)よりも精度が高く、羊水検査に見られる流産などのリスクがないことからNIPTなら受けてみたいと考える妊婦さんが多くいました。

NIPTが始まった当初は全国的にNIPTを受検する妊婦さんが多いことが報道されるなどしてNIPTや出生前診断を認知するようになってさらに出生前診断の件数は増加したという背景があります。

【関連記事】
NIPTについて知りたい方は▶『【医師監修】NIPT(新型出生前診断)とは?❘何がわかる?いつからいつまで?受ける割合、病院ごとの違いなどを解説』

出生前診断を受けることに対する妊婦さんたちの考え方とは

気になるのは、出生前診断について当事者の妊婦さんはどのように考えているのかということです。

厚生労働省が2020年度に行った調査研究によると、今後の妊娠で出生前診断を受けたいと思うかの問いに対し、51.8%の女性は受けたいと回答。反対に受けたくないと答えたのは7.2%でした。

出所:厚生労働省「出生前検査に関する妊産婦等の意識調査や支援体制構築のための研究(令和2年度)」」を基に作成。」を基に作成

このことから、半数以上の女性は出生前診断を受けたいと考えていることが分かります。

同調査では男性に向けたアンケートも取られており、「受けたい」との回答が51.5%、「受けない・受けたくない」が6.2%となっています。出生前診断に対する考え方は人それぞれですが、ご夫婦の約半数は出生前診断を受けたいと考えているようです。

検査を受けたい理由は育児などに対する不安が多い

河合蘭さんが自身の著書で妊娠育児情報サイト「ベビカム」の協力のもと「再び妊娠したらNIPTを受けたいですか?」という設問でアンケートを行っています。アンケートでは受ける理由と受けない理由の自由記述欄にはさまざまな意見があり、出生前診断を受けると答えた人の意見は以下のようなものがありました。

  • 「障害がある子は育てられない。」
  • 「高齢で確率が高く、自分たちの余命も長くはないので心配。」
  • 「妊娠中不安な状態でいたくない。」
  • 「自分たちの死後に上の子が負担を負うのでは。」

アンケート外のデータではありますが、以下のように考えている方もいます。

  • 「不妊治療の末に高齢出産だけれどもやっと授かった子どもだから万全の状態でお迎えしたい。」
  • 「事前に赤ちゃんの病気を把握しておくことで分娩はNICU(胎児の集中治療室)を完備している大学病院で行うなどの準備ができるため」

ここから見えることは妊婦さんには育てることができるかわからないという不安な気持ちと、育てるなら万全の状態で迎えたいという意見があるということが分かります。

検査を受けない理由は必要性がないから

反対に出生前診断に対して、必要ないという意見もあります。

  • 「障害があってもわが子に違いない。」
  • 「障害を知っても産むので検査はいらない。」
  • 「自然に任せたい。」
  • 「授かった命、誕生を待つだけでいままで通り出産すればいい。サポートシステムを整えないで検査を発信するなんで外国の真似をしているだけとしか思えない。出産した赤ちゃんを全身全霊で受け入れることが親の役目だと思う」
  • 「障害のある子を育てることで家族が得るものもある」

出生前診断を受けない理由として、障害があっても出産することに代わりはないので自然に任せたい、障害のある子を育てることで得るものがあるなど様々な意見があることが分かります。

出生前診断を受ける時に考慮すべき問題点

出生前診断には受けるメリットも多いものの、いくつかデメリットも挙げられます。

頻繁に議論が交わされている点でもあり今後出生前診断を検討している人は出生前診断を受ける前に陽性や陰性など結果が出た時にどう対処するかを予め夫婦で話し合った上で受けることをおすすめします。

ここでは出生前診断を受ける時に考慮すべき問題点を挙げていきます。

全ての胎児疾患が分かるわけではない

出生前診断は特定の染色体異常であれば生まれる前に疾患の有無を確認できます。

しかし、染色体異常が原因ではない疾患もあります。先天性疾患の中でも染色体異常が原因の疾患は25%しかありません。

そのため、例えば自閉症などのさまざまな要因が重なって発症する先天異常は出生前診断の検査対象外となります。

陽性の場合にどうするか夫婦で決める必要がある

非確定検査であるNIPTやクアトロテストで陽性の場合は、診断を確定するために羊水検査などを受けるかどうかを決める必要があります。

もちろん確定診断を受けない選択もあります。実際に羊水検査などの確定診断の結果が陽性の場合79.1%の方が妊娠を継続しない選択をしている報告もあり「出生前診断は命の選別に繋がる」という指摘する声もあります。

そうした背景を踏まえながらNIPTやクアトロテストを含めた出生前診断を受ける場合には、検査を受ける前から夫婦で結果に対してどう対処すべきか話し合っておくことが何より大切です。

その際には専門家のアドバイスや遺伝カウンセリングのサポートを受けることも欠かせません。当院のように陽性時にカウンセリングが受けられる。羊水検査までを行える施設かどうかも、考える必要があります。

まとめ:出生前診断を受けるかは慎重に決める

出生前診断については様々な考えが存在します。しかし条件が揃い必要な妊婦が適切な時期に診断を受けることができ、生まれる前に赤ちゃんの状態を知っておくことで万全の体制で出産を迎えることもでき、安心して妊娠期間を過ごすことも可能です。

出生前診断を受ける妊婦さんの割合などに影響を受け過ぎることなく、なぜ出生前診断が自分に必要なのかを見極めて検査を受けるかどうか、結果に対してどう対処するのか夫婦で納得できる結論を出した上で検査を受けることが大切です。

安心して出産するための新型出生前診断(NIPT)という選択肢

■妊娠中のリスク管理には出生前診断が有効です

妊娠すると心身が変化をはじめ、妊婦さんとお腹の赤ちゃんは様々な要因から病気になるリスクが高くなります。出生前診断は妊娠管理の上で有益な情報源となります。

胎児に異常が見受けられる場合には早期に準備ができますし、流産しやすいなどの特徴が見られる場合は個別の対応をすることが可能になります。
早期の発見には、出生前診断の中でも採血のみで高精度の検査が可能なNIPT(新型出生前診断)がおすすめです。

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